極光
大覚アキラ

あらいぐまは
ひとりぼっちで北をめざしていました

背中のリュックサックには
リンゴがふたつと
はんぶん食べかけのバナナ
角砂糖が三個

角砂糖は四個ありましたが
波打ち際で洗ったら
あっというまに
溶けてなくなってしまいました

これは洗わないで食べることにしよう
あらいぐまはかたく心にちかいました

あらいぐまは
それほど頭が良くないので
自分がどこに向かっているのか
よくわかっていません

いちめんの星空の下
どこまでも続くまっしろな世界

氷の上を歩き続けてきた足のうらは
すっかり傷だらけで赤くはれあがり
もう痛みを感じることさえありません

角砂糖を舌の上でゆっくりと溶かしながら
どうして自分は
ひとりぼっちで北をめざしているんだろう
ぼんやりと考えてみましたが
こたえは思い浮かびませんでした

いちめんの星空に
見たこともないような美しい光が踊り
あらいぐまは
どこまで行っても
ずっとひとりぼっちでした

さびしいな

そうつぶやいてみたものの
その気持ちがなんなのか
あらいぐまには
よくわかりませんでした


自由詩 極光 Copyright 大覚アキラ 2023-08-28 18:56:45
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