忘れ物になったハンカチ
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 忘れ物 に なったハンカチ
 あわいもも色 うさぎを飼って
 駅の向こうから来る
 おんなの子を見て
 つれていって
 と、輪をかいた
 石のむれをしずめた 海と
 とおい空 かすれた名前

 うす布でつつまれた想いを拾いあげ
 落ちるゆるやかさを見ない
 行き先も確かめられず
 泣くこともできず
 白か黒
 たった二羽でいるふるえが
 告げる 車輪との別れを
 忘れられずに いつまでも覚えている

 そこにある 町の灯が
 かすかな影をレールにひいて
 おり曲げたカバン
 すり減った革靴の
 かかとの辺り
 のぞくベンチとふれあい
 枯れた風になぜられた 

 終点の町で うかぶハンカチ
 誰かに もう一度 伝えたかったのだと思う
 しおさいをこえて
 話しかけて貰えた 懐かしさ
 皺を伸ばしてくれた指と
 おしあてられた泪
 ちいさなくしゃみを





自由詩 忘れ物になったハンカチ Copyright soft_machine 2023-08-05 09:19:28
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