スストアで
たもつ



剥がれた分度器を
落ちている人のように
並べていくみたいに
拙い息継ぎが
街の柔らかいところに
終わっていくみたいに
コンビ、ニエン、スストアで
スストアで
淡い方の手を近づけて店長は
小鳥を飼い始めた
美しくて知らない名前を付けると
スストア、それだけで
開いててよかった

週末がある夏の日に
交差点は作られていく
ここでは何も釣れない、と
空色の子供たちが
スストアで
銀行強盗の相談を始める
悪いことをしていなくても
許されないことに傷つく時が
いずれ来るというのに

スストアに吹く風が
スストアに笑う風が
スストアに息絶える風が
山手線の吊り革を揺らして
また風になる
店長はバックヤードに入ったまま
行方不明になってしまった
わたしは待ちながら小鳥と暮らし始める
最初から店長は
小鳥だったのかもしれないと思う
スストアの咲く庭で
わたしたちは愛を
語っていただけなのかもしれないと思う




(初出 R5.7.25 日本WEB詩人会)



自由詩 スストアで Copyright たもつ 2023-07-26 07:03:52
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