かつて人を打った石の記憶 二編
ただのみきや

踏みあぐね
手桶の中の
桔梗色
舌で探した螺旋
ささめく人の葉の
鳥のように途切れた
輪郭を
探るように炙る
ああ破顔
時けちらして
蔓巻く祈りの向こう
海耳にあふれ
見上げるために
沈むひと 
髪留めの銀
涼しく斬りつけて


  **


どしゃぶりの雨
白く地にけぶり
眼孔からあふれだす
群青の河は星を飲む
一糸まとわぬ白骨が
樹海を目指し歩き出す
時のもつれた毛糸玉
赤い地獄もついてゆく
恥骨を撫でて
なにも思わず
根腐れした人の目の
底なしの泥沼を
恥骨撫で撫で
なにも感じず
記号のように純化され
樹海の憩いをただ目指す
白昼のたどたどしい
笑い声のように
すべて受け入れて
すべてに否定され
つかずはなれずどこまでも
真っ赤な地獄は子犬のよう

    

               (2023年7月1日)










自由詩 かつて人を打った石の記憶 二編 Copyright ただのみきや 2023-07-01 16:44:51
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