一夜と一万年の夜
AB(なかほど)



祈るべきことが多すぎて
だから一日が終わるのだろう



そろそろお釈迦様が袖を振る頃だ。と言われ
てもう、八百と二十余年。それから、最期の
お裁きがあると言われてもう、千と十余年。
神も仏も随分と寛容なのに、僕等は相変わら
ずの他愛のない事で目くじらを立てている。
他愛のない事で、泣いて怒って口笛吹いてし
まおうか。それが、相変わらずの幸せ。

一人と一人はとても情けなく、とても弱く、
とても寂しがりやで、だから、とても優しい
んだね。

その一人の君が、一人の誰かを愛するとき、
ない袖も振れるのだろう。それは全てを薙ぎ
払うのではなく、例えば優しく頭を撫でるも
ので、一人が一人のために最期の日に言い渡
す言葉も、見放すのではなく、優しく抱きし
めるためなんだろう。

おうい 
  って遠くから手を振る君に、僕は、振る
袖もないのだけれど、気持ちいっぱいで振り
返す。



祈るべきことが多すぎて

だから
一日が終わるのだろう

眠るってのは
そういうことかい




自由詩 一夜と一万年の夜 Copyright AB(なかほど) 2023-06-10 00:24:28
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