ファシの戦い(十八)
おぼろん

激戦は一週間続いた。しかし、ラゴスからの援軍はなかった。
アースランテの主力部隊は、ファシの宮殿に押し寄せる。
クレール・ア・ラ・ガランデは叫ぶ、「マリアノスはどこだ?」
だが、宮殿内にはすでに女官たちの姿しかなかった。

彼女たちも、決死の思いでいたのである。
あるいは兵士たちに凌辱されることも、覚悟していた。
しかし、アースランテの兵たちは彼女らに暴行を加えることはなかった。
今後の占領政策のために、市民への攻撃は極力控えていたのである。

では、マリアノスはどこへ消え失せたのか?
ファシの街が陥落する前日、元老院の議会が開かれた。
そこで、マリアノスは元老院の代表であるシェリル・アーネストに遷都の提案をした。

「今残っている兵士や魔導士たちだけでも、ヨーミルノスに退避させるべきだ。
 我々はそこで、ラゴスの参戦を待つ。体制を立て直すのだ」
シェリル・アーネストも、この情勢下ではマリアノスに同意するしかなかった。


自由詩 ファシの戦い(十八) Copyright おぼろん 2023-05-26 16:03:26
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クールラントの詩