波紋を交わす
塔野夏子
たとえば 言葉で
たとえば 眼差しや微笑みで
きみとわたしが 交わしあうのは 波紋
それはあたかも 夢のように
けれど夢よりも息づくたしかさで
波紋は交わされる
たとえ離れていても
どんなに多くのものに遮られていても
ふたりのあいだには
ひとつの透明な静けさが架けられていて
そこを 波紋はかよいあう
たとえば 言葉で
たとえば 眼差しや微笑みで
そして互いが在るという そのことで
波紋は交わされる
幾重にも幾重にも くりかえし
きみとわたしのほかには
誰も知ることのない感触で