リタルダント
サカナ

斜体
滑空する
地平は沈黙したままの
全くの木蓮
光/グライド
焼けだされる
きれいな、
春を




廻輪くるまの中で幸せだった
花の匂いがしていた
四方八方が軸策で
立体/森みたいな空気
黒い猫がレンズからはみだしそうで
それが春なのねって、笑った


土がやわらかくて
その熱を
小鳥たちが頂戴する
羊草が
水の中を教えてくれる
それから少しだけ


幸せなのねって
螺子を巻きながら
あの指が笑う


レンズ
きれいに収まるほどの
小さな
(それから少しだけ)


プリズム
透きとおる
一枚一枚を
舌先で摘みだす


風が
背骨に触れる


身を起こすと、
分かる




(グライド)




斜体
滑空する
舞い上がって
沈黙する木蓮に
運ばれていく
浮かんでいるものたち
それから、
私の乗り物
カーヴ/スコープ
近づいてゆく
一滴の落ちる瞬間へ
(小さなものから
春は
ふり絞るように
音を生み落として、)





ここがいちばんきれい
ここがいちばん楽しい





廻輪の中で幸せだった
花の匂いがしていた
四方八方が軸策で
私、
春の端っこを握り締めて
息をしていた
目を開いていた
音が聞こえて
手のひらが温かかった



とても、
温かかった




(それだけで
心臓の
内側まで
きれいよ)





あの指が笑ってる
いつまでも笑ってる






春、なのね
幸せ、なのね



自由詩 リタルダント Copyright サカナ 2005-05-10 21:54:29
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