雪降る春
坂本瞳子

春に雪が降るというのは
珍しいかもしれない
けれど降ることはある
そんなことが過去にあったのを
覚えている
ただ覚えているだけで
それ以上に特別なことが
あった訳ではない
春に雪が降った
ただそれだけのこと
桜の花弁と見間違えてもいないし
その中で誰かに出会ったとか
その中で誰かと別れたとか
笑いあったとか
喧嘩したとか
涙を零したとか
そんなことはまったくなかった
けれども
誰かとすれ違っていたかもしれない
そんな風に思いたい
あの人だったらいいなと思う
そんな人がいる
そんなことに気づいた五月
そして六月は
例年のように鬱陶しく感じてはいない


自由詩 雪降る春 Copyright 坂本瞳子 2023-04-08 22:43:02
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