a drop
Monk



放送室では今、とてもいやらしいことが行われている
マイクの編み目一つ一つ、アンプ、インジケータ


視聴覚室で上映されているビデオ映像
ズームイン、ズームアウト、駆使される技術


音楽室で女教師が一人ピアノを弾いている
指と指と指と、生き物、ひっかき傷


美術室のトルソの背中にまわされる両手がある
爪が立てられる、声が響く、顔がない


標本と薬品に囲まれた理科室で電熱器は稼働し続けている
上昇する温度計、湿り気、「みしり」という音


リノリウムの廊下の端で、壁に、僕は、
張り付いたまま、緊迫、摩擦が、蛇口から雫がいまにも、、


図書室で少女の視線の先には重たい本を持った少年
返却と、興味と、蒸せるような匂いと、


体育倉庫の黴びたマットからは埃が舞い上がったところだ
汗を吸ったタオル地と、粉にまみれる、呼吸困難


雷の鳴るグラウンドを部員達は全力で走っている
楕円を描き、繰り返され、体力は消費され、


白いカーテンのひかれた保健室で影が揺れている
椅子にかけられた白衣、寝息、開かれた目


3階の角の教室で今、教卓に体重がかけられている
金具はあまく、机の角は鋭く、やわらかく、そして激しい


鼓動すら圧迫され、壁と、壁と、壁が、僕には
ここからは何も見えない、聞こえない、はずだ
ギシリ、さらに体重がかけられる、音
揺れている、はずがない
雫がいまにも、透明な、雫が、
瞼を痛いくらいに閉じる


スピーカーが静寂を破る、男の怒声
「用のない人間は早く帰りなさい!!」


目を開けることができない
頭上のスピーカー、ギシリ、ギシリ、鳴り始めた



自由詩 a drop Copyright Monk 2005-05-10 02:21:40
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