蛇の舌
リリー
一時間ほど止まないかもしれない
路面に跳ねる雨しぶき
ショッピングセンター出入り口の側
売り場フロアーから流れてくる冷気で落ち着き
ふと 気付くと
丸みのあるヒップラインの高さに目を
奪われていた
ニュートラルグレイのタイトスカートと
サマーブラウスの白が
マスクを着けている横顔を聡明に印象づける
黒のヘアゴムですっきりと
束ねられた髪がうなじの素肌へ眼を誘う
手中のスマートフォンへ
忙しげに指先を滑らせていた彼女
コンパクトな黒のショルダーバッグから
折りたたみ傘を取り出すと
人だかりを抜けた
急に ここにいることが
つまらなくなってしまった
それにしても
繁吹き雨よ
小走る女の
細身な背の影が、一匹の
カエルと化し呑み込まれてしまった