木蓮
Kaorinko

まだ桜に早い頃
木蓮が
花を咲かせる
冬の無骨さを残しながら
樹の先に
花びらだけを
咲かせる
花びら一枚一枚に
名前があるわけもなく
少し高いところの
空気のそよぎに合わせて
たやすくちぎれそうな感触を残しながら
端をわずかに揺らす
手をつないで
夕飯の買い物に行く
私たち
ありふれた光景を見た
既視感にとらえられ
一瞬
五十年後の
老夫婦のような面影を持って
その下を
行き過ぎる
あなたの手の
大きさ
温度
指のくぼみ
残っていくものの
存在
やぶれそうなものの
存在
変わらない
変わっていく
交差し端をつかめない
やぶれそうな感触の
木蓮の花の下で
お守りのように
あなたの手を
握りしめた



自由詩 木蓮 Copyright Kaorinko 2005-05-09 23:36:21
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