坂本瞳子

そこに落ちているその鍵を
拾っていいんだろうか

拾ってどうするんだろうか
持ち主はきっと見つからない

交番に届けたら
返って面倒くさくないだろうか

このオモチャみたいな鍵を
必要とする人がいるんだろうか

このオモチャみたいな鍵の
持ち主と話が通じるだろうか

黄色みたいなゴールドで
全体を覆われているそれ

ガラス玉には程遠いおっきなピンクの
プラスチックが付いてるそれ

中指くらいの長さだけれど
見なかったことにしたいんだ

触ってしまったらきっと
拾ってしまうんだこの鍵を

どこか新しい世界に連れてって
くれるなんてことはないんだろうけど

なんだかもう目が放せなくなって
いるような気がしなくもないんだけれども

いやいやよそう止めておこう
なにもなかった見なかった

軽々しいオモチャみたいな金の鍵を
拾ったりなんてしないよ


自由詩Copyright 坂本瞳子 2023-03-08 23:18:43
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