11月25日 晩秋のちいさな 奇跡
ダンテ カフカ ランボー



あさ 妻と 小さな 諍いを した

私は 黙って 静かに 聞くことが できたが

妻は 徹底的に 話したかった ようだ

私も 少し 怒りを 感じた




午後 散歩した

いい天気だった お日様が 温かく

明るく あたりを 照らしていた

11月25日 晩秋の 午後だった

私は いつもの 並木道を 公園へと

ぶらりぶらり 歩いていた

赤い木の実 や 黄色い かわいい 花が

咲いていた




私は 頭の中で 

「私の かわいい妻が 元気が ない」

「あの子は いい子 だから」

と ぐるぐる 言葉を 繰り返していた




公園の芝生の広場では 数人の子供たちが 楽しそうに 走り回り

遊んでいた




隅のほうでは 若いお父さんと 小さな 子供が

静かに 戯(たわむ)れていた




公園の 真ん中に たたずみ

私は お日様や まわりの 木々を 見ていた




突然 私の なかに 強い熱いものが こみあげてきた

気が付くと 私は 泣いて いた




世界は あまりにも 美しかった

むしろ 美しすぎた




11月25日 美しい 晩秋の 午後




泣いた あとで

世界は 少し 暗くなって すこし 寒くなった

「あれが いわゆる クライマックスか」

と 私は つぶやいた




そのあとで 私は また 少し 公園の 木々の なかを

ぶらぶら 歩いた




公園の 入口に ふたりの 若い おかあさん らしい女性が

立ち話を していた




公園に 入るときは 顔は 定かに 見えなかったのに

今度は はっきり 表情まで 見える

私が クライマックスを 経てきた ことで

見える ように なったのだ 私は 思った

私は 帰途についた




お日様は なおも 温かく 明るかった

わたしは 11月25日 晩秋の 美しい 天啓だと 思った




もし奇跡というものが あるなら

あの 美しさは

11月25日 晩秋の 小さな 奇跡だと 思った


自由詩 11月25日 晩秋のちいさな 奇跡 Copyright ダンテ カフカ ランボー 2022-11-25 16:02:59
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