女學生日記 三十八
TAT


十月三十一日 火曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時三分

朝礼運動場
自校体操
校長先生の御訓話がありました
一・明日の興亞奉公日について行うべき事について
今日は教室當番でした
又園藝當番なので早く行く
土曜日に先生の御注意をお受けしてから毎日運動場をお掃除してゐます
はいた後の箒の目のついた運動場を見ると本當に氣持が好い
何時までもつゞけたいと思つてゐる



十一月一日 水曜
天氣 晴
起床 六時三〇分
就床 十時三七分
今日は興亞奉公日です

今朝は變な夢を見て遲くまで寢てしまつた
朝礼運動場
國旗掲揚式
神社參拜をした
晝前三限で晝食後二限でした
今日は二限も体操があつた
三限の作法の時に黙祷が一分間ありました
今月の覺悟
一・父母に孝行をつくすこと(どうかして母によろこんでいたゞける様に仕事がしたい)
一・口をつゝしむ(何時も先生にも注意を受け心にも思つてゐるが仲々實行出来ない私は今月この二つを守り通したいと思つてます)



十一月二日 木曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時三七分

今日四限は全校の運動で自校体操やマスゲ|ムに行つた時の体操の練習を致しました
お晝からは色々仕事(明日の準備)を分擔して行ひました
私は庭球部でライン引でしたがそれをやらないで渡り板でかこつたり係の記章を直したりしました
私は園藝當番ですが木戸さんや平野さん東組の人はやつて下さいません
皆一年生の方がおやりになつてゐます
二年生は一年のお姉さまですからもつとしつかりしてよいお姉さまにならなければ不可ないと思ひます



十一月三日 金曜
天氣 晴
起床 五時〇分
就床 九時三〇分

今日は明治節でありまた私達の待ちに待つた秋季大運動會の日である
午前七時までに関の者だけ登校する
腰掛を出して並べたりした
八時五十五分に講堂に入場
明治節の式を済まし運動の服装に着代へてから外に出て開會式を済ましてすぐ私達の五十米になつた
私は六等でした
三田さんは椅子を皆でゆづりあつてやれば好いのに自分一人で初から取つて「此れ私の場よ」と云つて誰にもゆづりなさいませんでした
三時半頃終つて開會式では白が負けて終つた
でも来年あるからしつかりやりたい
小學校の競技では富岡が優勝しました
今日は本當に樂しかつた



十一月四日 土曜
天氣 雨
起床 五時〇分
就床 十時三七分

今日は會社の集會でお客さまが十二人も居らつしやいます
ですから昨日の疲れでやつと寢て居らうと思ひましたけれど二階ですからもう眠たいのを我慢して五時に起きた
八時までに大掃除をして色々廻しを致しました
私はとても疲れてゐて足がだるかつたけれど色々お仕事を手傳ひお使ひにも行つたので母から「疲れてゐるのによく仕事を手傳つて呉れましたね」と賞められた
まづ一度 月の初めの誓ひを果てた



十一月五日 日曜
天氣 晴
起床 六時三七分
就床 十時三七分

今日は昨日勉强が出来なかつたので一所懸命勉强した
少女倶樂部を篠塚さんの家に持つて行きました
其の時篠塚さんの小母さんから「よく肥えられましたね」と言はれた
私は此の頃御飯をとても多くさん食べる様になつた
母もお友達も「よく肥えたのね」と仰言つて下さるのでとても嬉しい
お晝からは靴下つぎをやりました
今日も又お勝手のお手傳ひをして母に賞められました



十一月六日 月曜
天氣 晴
起床 六時三七分
就床 九時三〇分

今朝は昨日長く寢て居られなかつたので少し遲くまで寢ていた
朝礼教室
吉田先生より御話
一・寒くなるから身体の衛生に氣をつける事
一・試驗は一所懸命やること
一・今まで注意した事(特に言葉の使ひ方について)をよく守る事等でした
作文は短歌を作りました
今日から遲くから始まる(八時四十分)事になつたので晝前に三限致します
今日はお茶當番でした
福本先生が頭の毛を刈つてしまはれたので見なれないので面白く思はれた
福本先生は一週間お休みになつてゐたのです



十一月七日 火曜
天氣 晴
起床 五時三〇分
就床 十一時三七分

朝兵隊さんのお見送りがありましたので朝早く行きました
スタンドの所で歸りました
朝礼はありませんでした
放課後は教室のお掃除をして歸りました
今朝二番の電車で母が在所へお手傳ひに行かれた
来週歸つてゐらつしやいます
ちゃうど試驗の間だけゐらつしやらないのです
本當に困ります
家に歸つても夕食の支度をしなければならないし食事の後片附もしなければならないし朝は兄さんが一番の電車で行かれるので早く起きなければならない
今度の試驗は下るかも知れない



十一月八日 水曜
天氣 晴
起床 四時〇分
就床 十一時三九分

今朝は四時に起きて五時まで勉强した
今日は英語と文法でした
お晝食をすまして歸つた
夜風呂へ入つた



十一月九日 木曜
天氣 晴
起床 三時三〇分
就床 十二時〇分

今朝も昨日の様に早く起きた
あたりは靜かである
たゞ私の本をめくる音のみが聞ゆる
本當に靜かだ
今日の試驗は國語と理科でした
お晝食を濟ましてお掃除をして歸つた


散文(批評随筆小説等) 女學生日記 三十八 Copyright TAT 2022-11-12 08:05:03
notebook Home 戻る