冷たい朝
ひだかたけし

層なす雲が
冷気とともに
やって来る
空の青み、
ぽっかり
空け
うっとりゆっくり
歩を進める
わたしの
透明な足を
掬っていく

宙に浮かぶように
宙を彷徨うように

意識は柔らかく身を起こし
耳鳴りの渦に巻き込まれ
足場をたゆたい探りながら

今日も俺は生きるのだ、
今日を俺は生きるのだ、

 遠く海鳴りの貝の殻
 原初の大洋のただ静謐
 世界のざわめきに
 息を殺し
 時の裂け目に
 手を伸ばす

  *

層なす雲が
冷気とともに
やって来る
空の青み、
ぽっかり
空け
ゆっくりしっかり
生き始める
わたしの
醒めた心魂を
澄んだ面持ちで
抉っていく





自由詩 冷たい朝 Copyright ひだかたけし 2022-11-05 10:48:01
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