花屋への道
soft_machine

柔らかさから 数えられる
甘くて暗い音色が好き

欠けてゆく 微かに
シンバルに似た月が好きで
砂丘の向こう
足ふみならす鬨の声
青空にぽっちり
あらわれる 黒点が
道にあふれる
金環の芯を塗りはじめ
さきっぽに沁みて

お花屋さんが好き
こんなに湿った 無言
虫の羽音につつまれていると
人を愛することの
苦しさがわかる
何も聞いてくれない
横顔の群が

わかる
衝突する 銀河

笑って見ている
あなたの硝子の 腕が拡がる

だから、かろん と
鐘がなる
ひそひそと交わされて
ことが済むまで 好き
おとなは見ている
世界がどうなる だとか
こどもは動きすぎて
ふり返らない
自分がしてること

そう、お花屋さんの裏庭には
くらい井戸があって
ことば足らずの 魂をからかっては
ひとつづつ 沈めた

泣くほど哀しくなんかない
笑うくらい 嬉しくも
ただ、なんとなく
時々ぼんやりするなみだにも
理由を つけて、あげたいよ
知らない人との
電話をきるたび
誰かのこころに触れて
秋によく似合ったことばが 好き

走りだす 誰かさんに
さらわれて

何処までもついてくる
しっぽを振り払って



自由詩 花屋への道 Copyright soft_machine 2022-10-28 17:54:29
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