言ってはいけない言葉がある
振り子のように揺れている
あなたの胸の内側を

言ってはいけない言葉がある
渇いた喉を塞いでる
吐き出されるのを待ちながら

想いは蜘蛛の糸
あなたは捕らわれた蝶
頭をめぐらすことすら出来ず
壁のひび割れを凝視する

口にすれば
つぶてとなって響く
水の鏡に広がる波紋と
搔き消される景色

口にせずとも
しこりとなって残る
枝の隙間で萎む
毒入りの果実

言葉は見えない包み紙
中はつぶてか甘い実か
心をくるむ声の紙

口にしかけて押し黙る
あなたが見せるためらいは
何を恐れる故なのか

あなたを傷つけることを
周りの世界は、ためらわないのに

言ってはいけない言葉がある

鋭く研いだ氷の刃が
唇の裏で溶けていく

あなたを内から切りつけながら
元いたところに還っていく
揺蕩う涙の泉へと

言ってはいけない言葉がある

舌に広がる血の味だけが
それが何かを、知っている