プロメテウス
岡部淳太郎

引き延ばされた時のうえに横たわっていた
何度も 何度でも細い管は出入りして
その間何を思うこともなく
何かが出来るはずもなく
ただ横たわって耐えるだけだった

この心臓は何度も死んでは再生し
痛みのなか 眠りという恩寵は訪れることはなく
いったいどんなものを人々に与えた罰なのか
自分では心当たりなどあろうはずもなく
ただ横たわることで果てのない一秒を数えていた

わが名は先に考える者
この果ての見えない責め苦もいずれ終る
時は満ちて わが罪はすべての人類に思い出される
それがむすうの歌となって
人々の唇を潤し始める時に――


*2022年9月15日、秦野赤十字病院にて、意識がはっきりした中、
3時間に渡って心臓につながる血管にカテーテルを入れる施術を行った。
神話のプロメテウスは人類に火を与えた罰として鷲に何度も再生する肝臓をついばまれる責め苦を受けるが、この詩では肝臓を心臓に置き換えた。


(二〇二二年九月十五日)


自由詩 プロメテウス Copyright 岡部淳太郎 2022-09-19 04:49:07
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