ハーレスケイド、探索(三)
朧月夜

「こんなものがあれば、魔法など必要ないではないか!」忌々しく、アイソニアの騎士が呟く。
その傍らで、エイミノアは言葉を失ったままだ。そして、ヨラン。
「この世界には、剣や魔法のみがあるのではありませんよ、騎士様。
 むしろ、そこに何があるのかを確かめるために、わたしたちは旅をしているのです」

「馬鹿なことを言うな! この旅は、エインスベルを救うための旅だ!」
「心得ております。しかし、わたしにはわたしの、探求心というものがあるのです。
 あなたには、あなた様の愛があるように、です」と、ヨラン。
「馬鹿気たことを言う。俺はまだ、お前を完全に信用したわけではないぞ!」

「わたしも分かっております、騎士様。この旅は、あなたがエインスベル様を救う、
 そのための旅でしかないと。ですが……わたしの探求心をも満たしてくださいませ。
 わたしは、自分の興趣によってしか、動かない者です!」

そんな風に、ふてぶてしく言うヨランを前にして、アイソニアの騎士も言葉を捨てるしかない。
「ならば、焼け! 焼け! あの怪物たちを、俺たちの目の前から退けろ!」
その言に駆り立てられたかのように、ヨランは甲虫たちの群れを滅却していく。


自由詩 ハーレスケイド、探索(三) Copyright 朧月夜 2022-09-05 03:39:10
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩