子供のかけら
竜門勇気

僕らは僕らの血の話をした
指先を切った僕を見て
君はかさぶたを剥がして笑っていた
”すごい!見て!同じ色”

あの日、君が剥がしたかさぶたは
僕と遊んでいた時にできた
鉄棒に登ってほんの少し違う校庭を見ていたとき
”ほら!屋上に誰かいる!”

君は振り返りながら指差して
僕と目を合わせたまま落っこちた
笑顔のまんま
”ほら!屋上に誰かい”
る、のあたりで

甘ったるい放課後の香りがした
あのこがはしゃぐ声がしていた
実は僕も好きだったんだよあのこ
泣きじゃくりながら必死で膝を押さえて
指の間から垂れ落ちる血を見ている君を覚えてる
君はキリストみたいだった
子供の罪を集めて殺し合った最後の一つみたいだった

”ほら、大丈夫だよ”
ほほを涙が転げ落ちてった
僕は一番近くにいたけど一番何もできなかった
誰かが呼んだ先生が君を連れてった

かさぶたは僕の罪だった
”すごい!見て!同じ色!”
子供のかけらを優しくつまんで笑ってる
一つずつかけらを集めてる

生まれたところとか
皮膚や目の色の話はしなかったよな
お互いにお互いの何をわかってるかなんて
最後にはどうでもいいもんな
ただずっとあの壊れそうな鉄棒しか
居場所がなかった



自由詩 子供のかけら Copyright 竜門勇気 2022-09-04 14:59:32
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