薄明の中で(十八)
朧月夜
フランキス・ユーランディアは、普段から青白い顔に汗を滲ませた。
「クーラス様。わたしは命に従うでしょう。しかし、このことはあなた様の今後、
言い換えれば、クールラントの未来にも影響を及ぼすことではありませんか?」
「ふっ、未来か。政治屋には政治屋の処世術があるものだ」
「しかし、民衆とは常に総意に従うものです。もしも陰謀に手を染めれば……」
「心配はない。クールラントはすでに変わり始めている。
アースレジェそのものも、な。わたしはその流れに身を任せているだけなのだ」
「あなた自身が、世界の改革者になると?」フランキスは驚いて言った。
「改革者か。古代には『革命』という習わしがあったようだが。
……だが、これはそのような事ではない。世界そのものが意思を持って、
世界自身を変えようとしているのだ」
その思惑は、口調は、かつてゴルドウィン・アルゴが唱えたもののようであった。
しかし、二人はそのことを知らない。「言語崩壊」から、三千年の時を経ようとしている。
このヨースマルテ、いや少なくともクールラントの行く末は、今はこの二人に託されていた。
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クールラントの詩