それかあらぬか
あらい

言い聞かせてしまえ、生命の蒸発
娘がひらかれるときに、
背景を止めだてる、増便と決壊

杉の上表をとりどり成長させる、
幸福を裁く医者のふと、
しかしながら個人の、水辺の、小指から
なつかしく単調な水中の夏日達 

一話の故人の。今、

丸く呼び慣れる口ぶりが渡し船を止め
僕の体験と遊びと想像を行き来して
嫌われてしまうほどの親切もこうして

意識されていない
小さく鳴りを潜めている
一睡を仕切る。まだ

自らを入梅と無意識的幻術の
きちんとした遺伝と
罪悪が消え残るぬくぬくとした衣に
さよならと外されたジッパーのこれで私が

ワタシを射止めて熱烈な領域に
わかばとワンカップと色褪せた
アウトロ《終奏》を佇ませる

消え残った地平のその、立ちのぼる真夜中は
そのままで、疚しいものだけ
有り余るぐらいに不自然で
水辺で暮す
胸にしまっておくだけの
湿気たライターの値段を査定するしかできない


むずかしいけれど本当だよ
粛々として寧ろ、その形ばかりが
待ち合わせのように、
祈りと
影を
身に浸したもの

そのためかどうかきっと輝石、これにて砂となる
見届けることがない未来、幕.




自由詩 それかあらぬか Copyright あらい 2022-09-03 18:24:40
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