みんみん蝉が鳴いている
ひだかたけし

みんみん蝉が鳴いている
曇天空に、ただ一匹

細かい雨が降っている

みんみん蝉は鳴き続ける
それは私の心に木霊する
抑え難い生命の高まりが
溢れ続ける生への執着が
私の魂を掻き立てる

生命は生み出され
生命は破壊され
宇宙は貪欲に渦を巻き爆発する

細かい雨が降るなかを
細かい雨が降るなかを

私は家路を探している
かつては在った
懐かしい魂の家路を
澄んだ泉の深い底に
発光するカタマリを観るように

まわりの家々に灯りがともる頃
私は白い小部屋で耳を澄ます
ひとり静かに魂のヒビキに
病魔に冒された肉を背負い

その時にも
あのみんみん蝉は鳴くだろうか
透明な雨が降るなかを
誰一人にも気付かれることなく







自由詩 みんみん蝉が鳴いている Copyright ひだかたけし 2022-08-28 16:57:29
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