朝焼けカレー
ベンジャミン

いろんな気持ちを煮込んでいたら
すっかり煮詰まってしまった
僕はふつふつと夜にとけてしまいそうになる

お腹もすかない
最後に口に入れたものは何だったか
そんなことを思い出す気力もない

けれど
本能がそうさせるのか
僕はふらりと冷蔵庫へむかうと
何も考えずに鍋の中にいろいろ放りこんでいた

あんなことや
こんなこと
そんなことや
もう何でもいい

てきとうに切りきざんでお湯の中へ
立ち昇る湯気の中には
それこそいろんな光景が浮かんでしまいそうだけど
全部ひっくるめて
さようなら

僕は大丈夫だと思います

窓の外を見れば
不安な空を押し上げるように
朝焼けが
だから
僕は迷わずカレーにしようと思いました

自分を煮込んだところで
うまい考えは浮かばないのだと

朝焼けは
もうすっかりカレー色
きっとまだ眠っている人たちの
たくさんの感情をスパイスにして
悔しいけれどおいしそう

最後に一粒
ぽとりと落とした涙は僕だけのオリジナル
立ち昇る湯気とともに
さようなら

朝焼けが薄くなりかけた頃
うまさを増したカレーを抱え

僕はこれから
こっそりおいしくいただきます

   


自由詩 朝焼けカレー Copyright ベンジャミン 2005-05-05 04:48:30
notebook Home