アイソニアの騎士の決断(三)
朧月夜
「イリアス殿。わたしは決してあなたが思うような、清廉な人間ではありません。
幾多の血を流して来ました。それは、正義の戦いとはほど遠いものだったでしょう。
わたしは単なる傭兵なのです。アースランテの騎士に取り立てられたことは、
様々な偶然の結果でしか、ありません」
「しかし、その偶然があなたを導いたのですよね?
あなたは今、何を目的として旅立とうというのですか?
それは、わたくしを置き去りにしても、価値のある旅ですか?
それに、もしもあなた様が戻らなかったら、このイリアスは……」
「ご心配には及びません。わたしは必ず帰って参ります。
そして、あなたと一生添い遂げることを約束するでしょう。
大丈夫です。わたしは簡単には死にません。ライランテ戦争の際にも生き残ったでしょう?」
「ですが、あなたが今回なさろうといていらっしゃることは、
戦争ではありません。そこには、武勇も、名誉も、存在しません。
わたしにとっては、あなたが不遇の人として生涯を終えてしまうことが、耐えられないのです」
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クールラントの詩