夢の犬
秋葉竹



休日の朝のホームを
滑り出した車窓から
照り返しの陽光みたいな
白い自販機がみえる

どこへゆくあてもなく
私を待つ人もなく
とてもよく似た子犬を
静かな夢の部屋に置き去りに

なぜかこんな時間の無駄使いを
しているけれど
持つべきものは友、であり
信じるべき方は神、であるのだろうが

友、ひとり持たず
みたこともない神を
信じられるほどの嘘つきでもない

なんてちょっと早いかな

ほんとうはわかってんだ

オレンジ色の車体は
透きとおる赤い朝日を浴びて
ゆっくりと人の少ない土地へ
私を連れていってくれる

人には
もううんざりなんだ
人を
信じる心を失いかけているんだ

なんてね

そんなヤワな愚痴を吐く
弱気な傷口を
けして逃げているわけではない
逃亡劇のまねごとを

笑って許してくれそうな
心を綺麗に洗い流してくれそうな
よもぎ色の風が吹く
あの部屋からはずいぶん離れた風景を眺めて

そういえばあの子犬の
名前を呼んであげなくては
なんて
夢ではいっしょに暮らしてる彼女の
名前ばっかりなぜか考えてしまうんだ













自由詩 夢の犬 Copyright 秋葉竹 2022-07-19 23:24:28
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