水 急にして月を流さず
TAT










いわゆる「水急不流月」












禅語だ









川だろうか
河だろうか

とにかく流れてゆく水だ

その流れがどれだけ疾かろうとも
そこに
水面に映っている月は

決して流されてゆく事は
       ないという意味らしい






そう言えば







ずいぶん子供の頃に



ゆく河の流れは絶えずして
しかももとの水にあらず


という方丈記の一節に
胸を撃たれて
思えばそれから
詩を書き始めたような気もする










まあそれはカッコつけ過ぎか










けれども
その一文に込められた
疑う余地のない
真実を汲んできた言い回し

どうにでも解釈可能な
どれだけ語っても
どれだけ例えても
尽きぬ翼(座席)の広さはどうだ
















体育も音楽も算数も理科も
苦手だった少年に

「せやけどキミ国語やったらちょっと位は行けるんちゃうか?」と


汚い歯で屈託も臆面も無く

笑ってみせた





あの日悪魔に見入られた
あの日道化に見入られた











お陰さまで今のこのざまだ




















あの月を何に例えようか
あの海を何に例えよう
この酒を何に例えようか
この川面を何に例えよう






































自由詩 水 急にして月を流さず Copyright TAT 2022-07-16 21:20:48
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