【短歌祭参加作品】記憶の、あまい
汐見ハル
味噌汁の茄子にやけどをした舌を冷やした夜に交わした明日
うぐいすをおくちのなかでとろけてく春の野に出で転がした笛
一皿のタコヤキでなく一粒を分け合えるならタコなし一興
晩飯のことだけ考え人生を暮れてゆくなら魚が焦げて
ひとつかみのふるるプリンを別腹にゆびぬきみたいにとじこめたかった
ナタデココやさしいひとの歯応えの響きなつかしひとりコンビニ
米びつでゆびをあらった記憶ですやさしいあなたやさしいあなた
伸びすぎた筍の想いやわらかく食むこともできず天いまだ遠く
うみうしのようにきゅうっとなるのですあまいこととはだれもしらずに
いちごにはコンデンスミルクをかけること知らずこどもが捨てたひとつぶ