エロデータ消失
番田 

何かを思っている時の憂鬱な夜。昼の街はひどく暑すぎた。麦茶を飲みすぎてしまうぐらいだ。それとも、飲みすぎてはいないのだろうかと昔訪れたフランスでのできごとを思い出して、その景色や人やもののことを思い浮かべていた。それは一体なぜなんだ。昨日PCのOSを再インストールしたら、別のボリュームに入っていた2.5テラ分のISOファイルが完全に削除されていた。総ファイル数にして650と、ものすごい容量なのであった。そういった事態を危惧していた僕は当初のインストール時にはHDD自体を取り外していたのだが、しなくてもいいのに何度か作業をやりなおさせられているうちに、それをつけたままインストールしていたのだと後で気づいた。それにしても、工場出荷状態に戻すという言葉は曖昧なもので、別のボリュームに入っているファイルはどうなるんだと突っ込みたくなる。僕はそして焦った。ファイナルデータという、ファイル復元ソフトをネット上で5千円で購入し、それでデータをスキャンすると、そこにほぼ存在していたであろうファイルを見ることができたのだった。僕がそこから取り出すことができたファイルは500ギガほどの量だった。残りの四分の三はもう一度借り直さなければならない。しかし、必要のない不要な作品もあったであろう。それを三分の一だとすると、新たに借り直さなければならない作品の数は100作品ほどになるであろうということが想定された。対策としては、ドライブの直下にあるファイルは危険だということを、知っておくことだと思いながら今日も窓の外を見ていた。そして、HDDでもソフトでもない、何かほかの別のものを買おうと思った。


部屋の中は熱気が立ち込め始めている。夏のこもりようは24時間換気システムの欠点でもあるらしい。外気を取り込むために給気ファンをとりつけたが、夜間は窓を開けなくても良いぐらいに快適だった。メルカリに紐付けられている売上金は別の所では使えない売上金なのでそのままになっているのだ。商品をメルカリで買うときには売上金を使うので無料であったりするということは危険なことだ。金を使ったという実感がわかない。実際には金を使っているのだ。それはクレジットカード以上に曖昧な感覚の中で生きている気がさせられる感覚だ。


散文(批評随筆小説等) エロデータ消失 Copyright 番田  2022-06-24 01:17:40
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