悩み相談について
TwoRivers

有名人の自死が相次いでいる。
コロナ渦以降特に、最前線で活躍している芸能人が、
突然何の前触れもなくという形での訃報にはとてもショックを受ける。

そして訃報記事やテレビのニュースの末尾には、
取ってつけたように悩み相談窓口の連絡先が記載される。
厚生省のガイドラインらしいが、果たしてこれで救われる人がいるのかと、
疑問や嫌悪感を抱く人もいると思う。

実は私自身も8年ほど前に死を考えていた時期、
藁にも縋る思いで、二回だけここに相談したことがある。
その際の思い出を綴らせていただく。

一回目。
電話の相手は中年の女性と思しき方。
辛い状態では何を話せばいいのか、整理もつかない状態で、
たどたどしくも身の上と辛い感情を吐き出させていただいた。
相手は特に何かを助言するでもなく、相槌を打っていたが、
「私もあなたと同じ年齢の息子がいるのだけど、本当に私も色々辛い思いをしていて...」
と何故か向こうの身の上話となり、時間の半分近く私が相談を聞く立場となってしまった。

二回目。
電話がいけないのかと思い、メール相談に切り替えた。
身の上と辛い感情をなるべく論理的にまとめて、メール送信。
一日で来た返信では具体的に何をすればよいかという話はなく、
あなたはよく頑張っているという励ましの言葉が中心だった。
そして、またしても、
「私もかくかくしかじかで、今とても辛い状態で...」
と向こうの悩みが綴られていた。

結局私としては、悩み解消にならなかった出来事ではあったが、
事実として今現在も、私は生きている。
死ぬのが馬鹿らしくなったとか、時間と共に状況がよくなったとか、
色々な理由はあるが、上記の経験からの要因は一つある。
それは私自身が、「人の悩みを相談されるくらい価値のある人間」であると知ったことである。

相談窓口の方は、多くの悩みを聞くことで、
ストレスを受け取り疲弊していたのだろう。
そして私にはそのストレスを受け入れる隙を見つけられた。
今振り返るとそんな解釈ができる。

その後、私は大学の通信講座を受講し認定心理士の資格を取得した。
悩みは「事実」と「その解釈」があって初めて成立する。
悩みは多くの場合、事実を変えようとして苦しむが、
何らかの方法で解釈を変化させていくことが何より重要であると気づくことができた。
私にとって上記の経験は、そのきっかけを与えてくれた重要な出来事となった。

この経験談が何かの役に立てば幸いである。
そして今後も「悩みを打ち明けられる隙のある人間」として、
胸を張って逞しく生きていきたい。


散文(批評随筆小説等) 悩み相談について Copyright TwoRivers 2022-06-11 20:58:24
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