老いては娘に甘え、孫娘に従え 
草野大悟2

と、いうわけで、まずは長女にスマホ。
午後十時二十分、深い海のような夜空です。
仕事も終わって、もうそろそろ家に帰りついているころでしょう。
すぐに出ました。
「洋ちゃん、お久しぶリィー」
海ホタルになった俺が言います。
「父の日、シメイがよか」
ベルギービールのことです。
「はい、はい、わかった、わかった」
ヨッパライをかる~くさばく見事な対応。
「シメイだよネ」
海月がぷかぷか漂いながら念を押すので、
「そぎゃん」
とみじかく光るのです。

父の日が近づいてくると、毎年、なにかといそがしい…

次女が言います。
「あーら、洋ちゃん、な~に」
「父の日」
「ああん?」
ミンククジラの愛がこだまします。
「だから、父の日」
「あ、ソダネ」
「オレ、宝焼酎のデカイ奴な」
「わーった、わーった」
「テルマは?」
「いま、風呂はいってる」
「ふ~ん」
孫娘テルマ小6。部活バスケ。幼稚園の頃から小林寺拳法に熱中。成績優秀。
全力集中ラッコ。従うしかねぇ。
ついでに、働き者でナマケモノの、亭主の話などもしていると、スマホが熱々の熱帯雨林になってきました、
「ンじゃ、宝焼酎のデカイ奴、ヨロシク!」          
「はい、はい」
こちらでも、か~るく、かるく、いなされます。

………まったく/どっちが/こどもか/わかりゃしない    
星空から、なつかしいマリンスノウが降ってきました。
              


自由詩 老いては娘に甘え、孫娘に従え  Copyright 草野大悟2 2022-06-06 12:48:49
notebook Home 戻る  過去