女學生日記 十七
TAT

五月十五日 月曜
天氣 曇
起床 六時一分
就床 十時二七分

朝礼は教室で島先生より「三つの事」について御話がありました
時間割變更 一限 作文 二限 数學 三限 書方
作文は短歌を作りました
体操の時 中山先生が「一人でもその組に飛箱が飛べないものがあつたらその組の責任にする」とお話がありました
どうしよう 組の方に迷わくをお掛けしては不可ないし さうだ お友達にやれる事が私に出来ない筈はない
しつかりやろう
夜 台湾の叔母さま 太郎ちやん よし子ちやん わたるちやん達がゐらつしやる
お風呂へ入つて寢る



五月十六日 火曜
天氣 晴
起床 六時二分
就床 十時三七分

体操の時間 吉田先生に飛箱をよくして戴きましたからよく飛べるやうになりました
理科と作法の補欠に書方と音樂がある
放課後は普通掃除で数學は問題集をしました




五月十七日 水曜
天氣 晴
起床 六時二分
就床 十時三九分

図画の補欠に英語でした
英語の時 私は一口も物を言は無いのに立たされた
篠塚さんが何か言はれたので默つて知らぬ顔をしてゐるのも篠塚さんが気を惡くされるやうに考へたので「物を云つては不可ない」の意味をこめてスカ|トを引つ張らうとした時に島先生に名前を呼ばれて立たされた
立たされた事位 自分が惡かつたと思へば何とも無いけれど お友達に本當に話しをして立たされたと思はれるのが辛い
私は篠塚さんが何を言はれたか さつぱりわからないのです



五月十八日 木曜
天氣 晴
起床 六時二分
就床 九時三七分

朝礼は講堂でした
國語は扇先生に草枕を讀んで戴きました
夜 お祖父様からお電話があつて「今電報が来たから台湾の叔母さん達は明日一時頃までに来るやうに」と云ふのでした
もう良子ちんと寢るのも今夜一晩かと思つて一緒にお風呂へ入つて夜床へ入つてからも繪本を讀んだりお話をしてやつたりしました



五月十九日 金曜
天氣 晴
起床 六時二分
就床 九時三九分

早く行つてピアノを習はうと思つて行つたら体操當番でしたので出来ませんでした
文法の時みんなが立たされた
このやうな事を吉田先生も「話さないやうに」と仰言つて居らしたし又 文法の時間がすんでからも富井さんが言はれたのにまだ話す人がある
どういふ風に考へてゐるのだらう
放課後 胡蝶のダンスを習つて歸りました
もう十二時三十五分の自動車で台湾の叔母さんもよし子ちゃんもフウちやんも歸られたし父も大阪まで送つて行かれたので家の中がひつそりしてゐた

よしちやんは私の上げた模様紙をとても大切に持つて歸つたさうだ



五月二十日 土曜
天氣 晴
起床 六時一分
就床 九時三五分

朝行で飛箱を練習した
今日のお辨當はおつけ物でした
お晝休みに吉田先生より色々の御注意をうけたまはりました
御注意 一 掃除(早く取掛る事) 一 更衣は早くすること(三分位) 一 行進について(草笛を鳴らさぬ事 花を取らない事) 一 作業(汽車で通ふ人 早く歸らなければならぬ方は作業を熱心にして歸る時は感謝の念を持つて歸る事) 一 晝食(落ちついて静かに) 一 どの學課も熱心になる事
夜 母は父が歸つて来たら實家へ行く筈だつたが止められた



五月二十一日 日曜
天氣 曇
起床 六時三七分
就床 十時二九分

朝起きてからハンケチを洗ふ
母が實家に歸るので色々まはしを手傳う
十時五分の電車で行かれる
お午から明日のお辨當のお菜を買ひに行く
午後二時 父が歸られる
洋服を二階に干してブラシをかける




散文(批評随筆小説等) 女學生日記 十七 Copyright TAT 2022-05-22 03:45:00
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