女學生日記 十五
TAT


五月四日 木曜
天氣 晴
起床 六時二〇分
就床 十時三七分

朝起きて見たらよい花のかほりがする
眞白なぼたんが二つ咲いてゐるのだ
もう蜂が来てゐる
「本當に精が出るのね」と賞めてやりたい気がします
朝礼 運動場でした
國語は書取でした
やつては居きましたが不意でしたので書けなかつたのがありました
放課後 水俣先生の齒に関する御講話をたまはりました
それから体操當番でしたのでかたづけてからお掃除に行きましたがもうすんで居りました
大へんすまなかつたと思ひます
これからはもつと早くかたづけてお掃除をしなくては不可いと思ひました
テニスをやつてかへりました
夜 ホテイ屋の和子姉さんがお嫁に行かれました
お風呂へ入つて寢る



五月五日 金曜
天氣 晴
起床 六時二分
就床 十時三九分

文法に何時かの時のやうに宿題が出ました
習字は清書でした
体操は大勢体操が出来なくて立たされました
東組は二人でした
私達の組は十五 六人です
「私達の組は十五 六人もよ 誰々さんも 誰々さんも」と言ふ人がある
自分の組の恥を言はなくて好いのにと思ひます
お晝休み 今朝裁縫室でお裁縫をした人達だけ圖書室でお注意をうけました
理由は鍵で明けるのを面倒ぐさがつて四年生のお姉さまの教室から入つてゐつたからです
これからは面倒ぐさく思はないで明けて入らなければいけないと思ひました
第六限は神社參拜でそれがすんでから「カイニン草」を服みました
ふのりの半分煮えたやうなものです
あめ玉を二つもらひましたが気持が惡かつた



五月六日 土曜
天氣 曇
起床 七時〇分
就床 十時二一分

朝礼は運動場でした
代数の時 ちよつとした試驗がありました
私は十五點でした
十七點が一人でした
英語は今日習つた所をもう一度よく讀めるやうにして来るのです
音樂の時間に「何時も東組に負けないやうに」とお話がありました
今日は晝前五時限で晝食の後 多田先生より「近眼について」のお話しがありました
後 圖書室のお掃除をすまして運動場にならんで遺骨をお迎へに行きました
學校へ歸つてからドツチボオルをやつてかへりました
夜 篠塚さんと勉强して一緒にお風呂へ入りました



五月七日 日曜
天氣 曇
起床 六時五二分
就床 十時三〇分

妹やお隣のたか子さん達と中池へハイキングに出かける
中池ではもう踊がはじまつてゐるらしく三味線の声が聞えて来る
篠塚さんと行くつもりで一時半も待つてゐたのに私にだまつて學校で裁縫をやつて見えたのだつた
此の間も篠塚さんが大へんおくれてゐらしたので わざ〳〵止めて待つてゐて上げたのに内緒で私よりたくさんやりなさるなんて本當に信じられません
ムシヤクシヤした気持だつたので神輿を見ても少しも面白くなかつた
中池はセミがジイジイ鳴いてゐた
私はその聲を聞きながら「夏だ!」と思ひながらぼんやり水面を見つめてゐた
四時歸る
お風呂へ入つて寢る



五月八日 月曜
天氣 曇
起床 六時二九分
就床 九時三七分

朝礼は教室でした
吉田先生より「サイレンが鳴つてから靜かにする事」「町を歩く時 物を言はないでさつさと歩く事」等の事を注意されました
第二限は理科は園藝でした
お晝休みは飛箱を練習しました
英語がすんでから海仁草を服みました
私が服めなかつたので吉田先生の分のあめ玉までいただいてしまひました
先生のみにくかつたでせう
本當にすみませんでした
七限は五時まで園藝をしました
家に歸つて後 母とお使ひに行つてから勉强をすまして寢た




散文(批評随筆小説等) 女學生日記 十五 Copyright TAT 2022-05-08 21:44:27
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