右手の痣
坂本瞳子

手の甲の痣はなにを示すのか
どこかにぶつけたのか
覚えていやしないけれど
この赤紫色の小さな円形は
どうしたことか
痛みなどないけれど
なにをどうぶつけたら
こんなところにこんな色の痣が
できあがるというのか
寝ている間に動き回ってでもいるのだろうか
なにかに操られてでもいるのか
記憶が欠け落ちているのか
なんにしても不気味な話だ
痛くないからそれでいいという訳でもない
数日のうちに消えてなくなるだろうか
これはただの淡い希望だろうか
なにか大きな病気に発展していくのだろうか
不治の病ということはないだろうか
ふと不安を募らせてみたりもするけれど
なにどうせ大したことはないのだろう
ふといろんな妄想をしてみたりする
よっぽどの暇人だと自らを嘲り
人の反応を見てみたくなって
わざと手の甲の痣を見せつけるような
そんな仕草をしてみたり
それもごく自然な風を装って
いやいやまだもうちょっと
遊んでいられそうだけれども


自由詩 右手の痣 Copyright 坂本瞳子 2022-05-06 11:48:39
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