桜と脳
末下りょう

口の奥が何処よりも深いその人は 一人称以後の薄い唇に
なにかを落としたような声を
そっと埋める



最後の指のかたちで 語りかけながら
触れたのは

石の皮膚 濡れた風


床でわれた言葉と

揺れる壁の 
彫刻のような影


シンクの食器が 音もなく水に沈み  終わらない喜劇の静けさ

波もなく 凪いだ階段は 雪の住みか


闇のような緑


美しい色にはいつも灰がある  


桜のように


揺れる脳




自由詩 桜と脳 Copyright 末下りょう 2022-04-10 10:29:19
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