海と営業車
番田 

僕は昔、営業マンをやっていた。今は、よく出かけていた海を思い出す。どこかに行った帰り道に走った、コンビニの脇から海辺へ続いていた道を思い出す。砂に埋れかけている防風林を横目にして、浅くアクセルを踏んでいた。それっぽい場所に着いた僕は当時はまだ珍しかったモバイルノートパソコンを開いて、共有ソフトで拾った動画などを見ていた。モーニング娘などが、主要な動画としては、そこには出ていた。アブリルラビーンもいただろうか。確かに、いたのだろうと思う。僕は、でも、現実の彼女の姿を見ることができたのは何年も先の、最近の話になる‥。すでにもう、当時夢中になっていた僕自身の興味自体が信じられなかったのだが‥。


しばらくして車を出して、行こうとしたが、僕はタイヤが砂に埋もれて、そこから車が出せなかった。仕方がないのでアクセルをベタ踏みしていると、なんとかそこから脱出できた。ガソリンの目盛りが、2つくらいは減っていたように感じられた。僕は経費に関しては、問われなかったためどうでもよかった。それに、でも、携帯代は自腹で払っていたのだ。当時は普通だった話だが、あれは相当な額だったと、思い出すたび腹立たしいものである。


散文(批評随筆小説等) 海と営業車 Copyright 番田  2022-04-06 01:02:27
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