仮名の奇跡
st

ひらがなやカタカナというのは

本当に偉大な発明だと
つくづく思う

そのもとになったのは
奈良時代を中心に使われていた
万葉仮名らしい

平安時代になってから
仮名が発明されたが

当時の男性の多くは

中国語を使えることが
エリートだと思いこみ

漢字を「真名」

女性が発明した日本文字を
「仮名」とよんで馬鹿にした

しかし
紫式部や清少納言が

日本の言葉で考え
日本の言葉で気持ち表すことを大切にして

仮名文字で
思ったことや感じたことを
素直に表現する文学をつくってから

それらの素晴らしさに感動して
男たちも仮名を使うようになっていったらしい

それではなぜ
仮名が偉大なのかを

におい

というひらがなを例にして
証明してみたい

においを漢字で書くと

臭い
匂い

という二通りの
意味が異なるものになってしまう

即ち
臭いとは不快なにおいのことを言い
匂いとはよいにおいのことを言う

においを漢字にすると
より明確なものになるといえるが

ここで問題なのは
よいにおいや不快なにおいが
人によって変わるということ

タバコのにおいは
愛煙家にはよい匂いでも
嫌煙家にはいやな臭いとなる

従って
タバコのにおいは

匂いとすることも
臭いとすることもできない

なんて
奇妙なことになる

こんな時は
漢字ではなく仮名のにおいとすれば

すべての人に対して
通ずるようになる

もともと
漢字から発生した仮名が


この日本の国で生まれ


より使い勝手のよいものになったのは


まさに奇跡としかいいようがない







自由詩 仮名の奇跡 Copyright st 2022-03-03 10:11:24
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