夜伽
あらい

我々が            鍵を失くした空間で刻々と
夕景の差以外を焚きつけ      作り上げて杜と賭ける
           蛍光は夜通し
                  胎盤を成型している
小憎たらしい粉末は端や庭に遜って
    目的問わず産み付けていく
        不時着した碧空が 心臓が狂い在て
              紙篇を握らせたものであるが
燭台に消えかかった罪滅ぼしすら
我侭な多幸感で滑稽に解け遺るありさまを

        (累々といざない続ける)

    素晴らしいと息をのみ匂い立つ水平器に頭を垂れる
だが底なしの海にある、その手をとることができないでいる

死出の旅路とおく幽かな薰りを胸いっぱいに吸う 賛美歌は
      盛んに孤独の中でわたしと喚びワルツを嗜んだ
         煙たがる童心を曝くばかりの翼は広がり 

  ただ殺風景な冬のまちなみを 大衆文学さながらに
    闊歩するような心地丸出しの私ではないか

  まるでぎくしゃくなパイプオルガンが頭上で裁いている
          神はどこ吹く風で身を取り巻くような
夢路を辿る。

ここへ。         憐れな自我と忌々しく心中する
           食指を伸ばし発芽するための
         偽物の記憶がそこかしこに
己と堕胎した。

             その非は木漏れ日の里を蹂躙し
          いろとりどりのお喋りをはじめている


自由詩 夜伽 Copyright あらい 2022-02-07 22:14:58
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