言い出せなくて
クリ

桜の花がもうすぐ咲く頃に
僕らはいつも別れた

それから
奇跡的に誰もいない桜の花びらの嵐の中
僕は「埋めてくれ」と言うばかりに歩みを止めた
いつもそうだった

だから
少しだけいい匂いのする過ごしやすい夜更けに
僕はたしかに一人でいることにした
君は何度も去っていった 暖かい方へ
だから僕は春と夏を見ないようにしたんだよ
いつもそうしてた

そうして
上着をもう一枚着ようか迷いだす頃に
差出人のない落ち葉の手紙が届く
まるでずっといっしょだったかのように
いつかまた破られる約束をする
君の髪を撫でながら気づく
君の匂いが少し 変わったと
それを言い出すきっかけもなく

たとえば
吹雪の中僕らは ずっと抱き合っていた
その場所にしか 一緒にいられる理由がなかった
まるで切なさを求めたかのように(そうじゃない…) でも
そうするしかなかった いつもいつも

そうして ふと思う
君はまた 桜の花がもうすぐ咲く頃に
去っていかなければならないのか と



                                  Kuri, Kipple : 2005.04.29


自由詩 言い出せなくて Copyright クリ 2005-04-29 22:40:34
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