或いはもう捕らえられているのかもしれない
末下りょう


或いはもう捕らえられているのかもしれない  この一歩は前進なのか 後退なのか
走っているのは内側なのか 外側なのか
内も外もクソもないのか
ここは何処で何処を目指していつ何処からなぜ走り出したのか


走っているあいだに何が失われているのか 走っているあいだに何が生まれているのか



ひたすらランナーのふりをして



何度も振り返りながら


足脚や背中に鋭い痛みが走りもするけれど
それもまたナルシシズムの舞台装置かもしれないと疑いながら

自らの息遣いを間近に
追跡者の足音から逃げ惑うように

ただ走り続けている


ただ 断続的に浮かぶ悪夢のような失神に落ちた街を

走り抜けていく


だれもが自らの沈むべき夜の欠片を追うように



自由詩 或いはもう捕らえられているのかもしれない Copyright 末下りょう 2022-01-09 09:47:27
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