屠所の羊
あらい

腹いせに、氷のような山を登る昇る
あと一歩というところで
八つ裂きにしても飽き足らないほどの
ここは聖なる場所、ここは宇宙の中心
人類が残した足跡と言われる
立ち腐れたバンガローに
疲れ立てたようなむさくるしい者が
見る影もなく
荒れるに任せた渓間に、疲れ果てた舟を構える
それで、また
打ち切られた錯覚を、しじまに偲ばせる
ひなた雨、猫のようにと、盗人は心を寄せる
メモリは僅か、ホームシックを彷彿させ
間隔が崩れ、振り返るときに、
いとおしがる、囀りが自覚するのは
退席した後、
堆積した址で、苔の生え おしあてられた
大木に
ぴしゃりと翅た、おとなしのかまえ
それで、つりあって動けぬ
物静かな羊、そのものでありたかったのに
櫻の苑
眠りから褪めてしまったのだ。


自由詩 屠所の羊 Copyright あらい 2021-12-28 20:14:44
notebook Home