汚れた血
大覚アキラ

ほんとうの名前を知られてし
まったせいでわたしは呪いを
かけられてしまいそれ以来わ
たしは毎晩のように夜通し膝
を抱えて自分の爪先を眺めて
過ごすそんな寂しい人間にな
ってしまいましたああそうで
すそうなのですほんとうの名
前だけはぜったいに教えるべ
きではなかったのです今更に
なって気付きましたがあなた
はいつも文脈を読み解くとか
価値の背景にあるものを推察
するとかポストモダンな現在
を斬るとかドラマの創出をコ
ンテクスト化するとか幻想の
無化を拒絶するとか評価軸を
ずらすとかそういうことばか
りを訳知り顔でわたしに説い
てきましたがそれらすべては
わたしを陥れるための巧みな
罠だったのですねそうですそ
うなのですあの微笑みもあの
抱擁もあの接吻もあの約束も
あの契約もすべては欺瞞すべ
ては企みすべては偽物でしか
なかったのですねそんなこと
をわたしは毎晩のように夜通
し膝を抱えて自分の爪先を眺
めながら考えているのです。


自由詩 汚れた血 Copyright 大覚アキラ 2005-04-29 12:21:35
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