雪洞
あらい
いつも行くはずの近道は薄明を終えて神社の鳥居の脇を吹き抜ける
平坦な午後に並ぶ学生たちが少しのやすみを記憶するとき
みちゆきは確かに真新しいスーツを纏い 大きめの制服を着て
まばゆいほどキイロイ廂をかぶって。交差点を塞いでいる
皆同じ顔のへのへのもへじ
覚えきれないほど長たらしいタイトルをつけて
人生を書き込まれたバッドエンド
どうせ死んじまうのに バイパスは渋滞していた
それでもまだ信号で止まったわたしを誘導するように、
ゆっくりと歩き出す、坂道を転がるような まあるい石ころは
背を押されて とまることをわすれてしまった
紛れもなく過去のわたしと それにあたって鮮血を流した女を見た
ちょっとした弾みで脱輪した者は
ちょっとした襞に絡まり緩んだたわみに惹かれていく
酷く愉快な話
野菊は乱れ
オモチャの兵隊は散らばる
夕餉の残り香が一線 狼煙のような
カラフルな葬列にちかづくように
壇上の大団円 肥太った雪解けは近そうにあった
明るめのアーケードから、
とろけるあかりと影に溜まるホコリばかりの
塗り固められた今日という光を生かすだけの生彩処置
遠回りの雪洞を抜けると、ゆらめくだけの ほのお。