波紋
蝶番 灯



風は 悠久の時を風化しました

草は 朽ちた誰かの命で成長しました

空は 嘘もない真実の青で嘲笑わらいました




耳を澄ませば 声が降ってくる




水を渡る蜻蛉と 風に乗るアゲハ蝶

時は流れることなく

ただ蓄積し風化していくのに

何故この季節は麗しく美しいのです



渡り鳥は四季を知りませぬ

四季は渡り鳥を知りませぬ




雲は 時として嘘を装いました

花は 枯れ朽ちても美しいと云いました

時は 現在に於いて居場所など在りませんでした




時は過ぎるのではなく 忘れられるだけ




銀色の月と 白いうさぎ

ルビーの眼は何を映すのです

あなたから見ても愛は

きっと全く綺麗でも美しくもないのですか



絶えず生まれて尽きる生命の

理由など求める必要はありませぬ




湖畔の景色 蒼い月 仰ぐ星空

泡沫の消えてゆく生命に

誰知る事無き思いを祈る

生まれ行く新しい時を

風は記憶を過ぎり記憶に置き去りにして行くだけでしょう

涙の雫 季節の経過 弄る理由

消え逝くことに理由など無い

そう其の様に 此の生命の理由も無いでしょう




月夜の




月夜の湖畔に堕つる 運命の気配がしました



咲いても枯れるのも其の旋律の徒にすぎませぬ



降り始めた雨も

星の明るさも

流れ流れ行く輪廻も



どうして



どうしてなぜ愛という言葉は生まれたのです

それは単なる夢に過ぎませぬか、

それは錯覚や幻の類いに過ぎませぬか、

それも全て





燻りながら霧中の中だけに存在するだけでしょう


自由詩 波紋 Copyright 蝶番 灯 2005-04-28 09:00:08
notebook Home 戻る