ゴーストメール
イオン

五十四歳で友人女性が亡くなった
新型コロナの影響で
家族葬で済ませ香典も郵送した
最期の別れをしたいから
四十九日を迎える前に
もう一度会いたいと思っていたら
昨晩夢枕に立った

バス停の前で
旧友と三人でバスを待っていると
彼女が歩いて来たのだ
全員オートバイ乗りだったのに
なぜバスなのかは解らない
しかも全員二十代後半の姿だ
「待ってたよ
 死んでるのに元気そうだな?」
「うん、大丈夫、歩けた」
「あれ、透明じゃないんだ影があるよ」
「うん、ちゃんとしてるよ
 ほら、腕触ってみて」
「おお、肉体だ生きてるみたい」
「やだぁ、もう、死んでるしぃ」
「やっぱりそうなのか
 そうだ、写真撮ろう写真
 最後の記念写真」

スマホのインカメラで撮影
「ギリギリ全員入った写ってる 
 みんなに送っておくわ」
「あたしにも送ってGメールに」
「届くのか?」
「うん、四十九日まではね」

バスに彼女だけ乗らなかった


自由詩 ゴーストメール Copyright イオン 2021-10-10 11:23:40
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