見上げれば空に
平瀬たかのり

 今日は
 グリストラップ清掃の日だ
 つまりは排水溝清掃の日だ
 すなわちドブ掃除の日だ

 蓋を開ければ地獄の窯もかくやだ
 うぐぉ 何色というのだこれは
 ぐはぁ 何臭というのだこれは
 いつまでたっても慣れやしない
 
 ヘドロの溜まった籠を引き上げる
 何重にも重ねたゴミ袋の中へヘドロを移す
 薬液ヨゴレトレールをヘドロ排水溝に流し込んで
 肥柄杓でぐりぐりかき回すヘドロ
 その手応えグッとくるヘドロの手応え
 掬い上げたヘドロを排水管に流し入れる
 流し込み続けるヘドロ
 ぐはぁ まったく何臭というのだこれはヘドロヘドロ
 (明日、外部排水溝もこれを)

 昨日から
 コンサルタント先生の指導の下
 全店売り上げ競争が始まった
 先生はヘドロを掬ったことがあるだろうか
 そりゃあるよな
 だってスキルチェック表で
 グリストラップ清掃ができるって項目を
 書いてたくらいだもの

 タイムカードは顔認証ピロリン
 雨はいつの間にふったのだろう
 濡れた路面の駐輪場
 自転車にカチャッ鍵をさして

 ペダルこぎこぎ帰り道
 見上げれば空に
 架かっている虹に
 ぼくはいつ気づくのだろうか


自由詩 見上げれば空に Copyright 平瀬たかのり 2021-10-09 20:55:58
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