草野大悟2

白い死神の背ビレに切り裂かれた
ふかいふかい空の底から
ぽろぽろと
こぼれおちてきたものの正体を
ぼくは
知っている。

それは
まき散らかされる
おびただしい数の安売りの愛だ。
ひとつひとつに巧みに隠された罠。
 
あなたたちそのものを
あなたたちが気づかない間に
根こそぎ溶かしさり、
いつのまにか
飼い慣らされた羊に変えてしまう
毒だ。    
彼らがしかける無数の罠の
もっともありふれたもののひとつだ。
  
うずたかく積み重なった
かつて人であった者たちの墓場に流れる
甘ったるすぎる旋律
愛モドキのリフレイン 
そして、鼻を捥ぐ
「腐臭」


自由詩Copyright 草野大悟2 2021-10-09 11:02:35
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