ふるえるように雨がふる
ベンジャミン
ぽつりぽつりぽつり
ひとり部屋にたたずみ
明かりかすかに瞳に浮かび
いくつもの雨音に呼び起こされる色々
色鉛筆で
一番最初にへってしまうのは青色でした
空の色なんてわからないけれど
白い画用紙に
青色をのせればそれが空だと教えられたから
青に青を重ねてひっしに空を描こうとしたのです
小さい頃は
それでよかったのかもしれないけれど大きくなると
空の色はどんどん複雑になってもう
どんな色だか誰も教えてくれません
ぽつりぽつりぽつり
ひとり部屋にたたずみ
今日はまた
こんなにも雨だから
あなたからもらった青い絵の具をたらして
まるできれいな空なんて描きたくなる
瞳に映る景色一面
まるごと空にしてしまいたくなる
けれど両手でおおえてしまえるほどの
こんなに小さな僕にでさえ
世の中はあまりに広すぎるようで悲しいです
だって
こんなにも雨
屋根の下にかくれてもいやおうなしに入り込んでくる
僕をびしょ濡れにして
まるで地下へと押しやるように落ちてくる
ぽつりぽつりぽつり
軽はずみな言葉で勇気づけてしまった自分を
どうにか救い出そうとあがくとき
けして青くはない空に向かって両手を組み
祈るように求める
常に生まれ続けるものたちへ
これから生きようとするすべてのあなたへ
どんなにかきれいな青い空を
見せてあげよう
そのためにはもう僕は自分など欲しがりませんから
もしも涙が美しく透明でないならば
せめてこれから描く空の青を
限りなく透明にしてください
せめて僕が知ることのない本当の空を
すべてのあなたにお与えください
失くしてしまった
小さい頃に使っていた色鉛筆の青
削ってまるまって
また削ってまるまって小さくなってしまった
あなたがくれた
絵の具の青も今ではもう
どんなに薄めても僕をぬりつぶせないけれど
ぽつりぽつりふる雨に
声もなく肩を揺らしながら僕は泣くでしょう
それはけして悲しいからではないと
あなたは信じてくれるでしょうか
ぽつりぽつりぽつり
こんなにも
ふるえるようにふる雨だけど