料理で俳句㉔素麺
SDGs
本日のお品書き~素麺
からだのすきとほりゆくそうめんの昼
「素食」なる言葉が流行ったのは、いつ頃だったろうか?粗食ではなく素食。化学的な加工のない天然自然のものを食べようという提案だった。それも質素に簡素に。グルメの時代のアンチテーゼとしては妙に説得力のある主張だった。
素麺はその字面からして素食の代表格であり、その白色が素そのものであるようであり、その細さもまた素にふさわしいといえる。
素麺は茹ですぎるとよくない。まだ少し硬いかなとおもわれるタイミングで火を止め、余熱を利用するのが上。素麵を流水で洗い、ぬめりと油分を落とした後、氷水に放つ。氷水で増やされた素麺はやわらかいのに凛とした背骨がうまれる。
麺つゆにこだわりはないが、甘くなく、小口切りにした浅葱と生姜を下したものを少々用意したい。もちろん麵つゆもしっかりと冷えている。
素麺は食べれば食べるほど、下腹あたりから透きとおっていくような気分になる。下腹の次は胸あたりが透明になる。次に腕が消え、素麺猪口が消え、箸が消え、口が消えていく。そんな気分。なんというか「一本の氷柱」になったみたいで、後ろの景色が透けて見えそう。素麺を食べるたびにそんな気分なる。みんなもそうなるよね?ならない?